業界トピックス

人材育成

公開日:2021/11/11

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【多様な働き方を研究するコラム】ネタバレ視聴から生産性について考えてみる

■授業を倍速で観る大学生

「長引くコロナ禍によって、多くの大学でオンライン授業が広がっています。学びのリモート化で学生に好まれているのがオンデマンド授業です。その理由はふたつ。
ひとつは、あらかじめ録画された授業を自分にとって都合のよい時間に視聴できる利便性。もうひとつは、視聴時間を早送りできる時短のメリット。学生の間では「×1.2倍くらいがちょうどいい」とか「いや俺は×1.8倍でも大丈夫」といった会話が繰り広げられています。

 あまり気の進まない勉強にかける時間を縮めたい。本末転倒な気もしますが、そうした心理は分からなくもありません。しかしZ世代といわれる若者の間では、楽しみであるはずの趣味や娯楽においても時短意識が広がっているのです。映画を観るにしても、倍速だと2時間の作品を1時間で観るわけなので、たしかに「効率」はいいです。
 YouTubeにNetflix、最近の流行りではオーディション番組と、いま娯楽動画はあふれ返っています。彼らの口癖は「外したくない」。つまらない作品をつかまされて、時間が無駄になるのを避けたい。逆に、何本もの駄作を観た挙げ句、自分にとっての傑作にたどりついたとしても、そこに喜びはありません。そのくらい回り道や効率が悪いことを嫌います。

■ネタバレ視聴

手っ取り早く重要作品を押さえたい、ポイントを知りたい。こうした時短意識が高じた結果、ネタバレ視聴という風潮も出てきました。ネタバレ視聴とは、内容をダイジェストで紹介している動画、もしくはまとめサイトや口コミサイトのあらすじを読んで結末まで把握したうえで、価値があるかどうかを判断してから視聴するというもの。
 「犯人が誰なのかあらかじめ知った状態で観たい」とか「自分が推している登場人物がどうなるのか分かった上で観たい」などといった声は、Z世代の若者から実によく聞かれます。え?結末知ってから観るの? オトナ世代からすると、“ちょっと何言ってるか分かんない”と、素でサンドイッチマンのツッコミを入れてしまいそうです。
 結末が分からない「ドキドキ感」より、せっかく費やす時間を後悔しない「安心感」が勝る。いかに自分が投資する貴重な時間をできるだけ有益に使いたいと思っているか。Z世代の時間への執着心を端的に示しています。

■24時間戦えますか時代の異様さ

誰が犯人か知ったうえで刑事モノとか観てなにが楽しいんだろうか。時間をムダにしたくないにもほどがある。確かに、Z世代の時間に対する意識は極端な気もしますが、一方で我々オトナ世代の時間概念にも自問自答すべき点はあるかもしれません。
 それは特に仕事について。昔はとにかく長時間働くことが美徳であり正義でした。「24時間戦えますか?」とか「5時からオトコ」という健康ドリンクのCMがバンバン流れていました。
 
「5時からオトコ」というのは、5時までは適当に仕事をこなして、会社終わりの5時から元気になるサラリーマンのこと。Z世代の若者から、「じゃ、5時まではなんだったんすか?」とツッコミが入りそうです。昭和の時代にはスマホなんかないから、一回会社を出ればなにをしようが見つからない。夕方までうまくサボりつつ、夕方会社に戻って残業して頑張ってるアピール。当時の評価は仕事量で、たくさん働ける(と見える)馬力は出世に必須の時代でした。これはこれで、相当歪んだ時代だったように感じませんか。

■年収脳から時給脳へ

こうした異様な働き方が「過重労働」や「ブラック企業」の温床になったのは言うまでもありません。この流れに歯止めをかけるべく、2019年に厳格な残業規制を含む働き方改革関連法案が施行されたのもご存じのとおりです。
 「同じ量の仕事を、昔より短い時間でやらないといけない。昔の人はいくらでも時間をかけられたが今は違う」。若者たちは、ある意味、否が応でも時間を気にしながら働く習慣を身につける必要に駆られているのです。そういった点で労働市場における大きな潮流は、Z世代の価値観とシンクロしています。
 
 5時からオトコは、24時間戦う前提社会における必然的ワークスタイルでした。結果的に自分の働く時間を薄く伸ばしていくことで残業代も増えますから、収入の考え方も“グロスでいくら稼いだか”を基準とする「年収脳」が育まれます。こうなると年収の額に重きが置かれすぎて、その年収を得るために何時間を費やしたか、は語られません。
 一方で、Z世代は、“稼ぐのにどれだけ時間をかけたか”で考える「時給脳」です。働く時間を濃ゆく濃ゆくして効率よく稼ぎたい。こっちのほうが極めて真っ当な感じもします。
 残業したがらない若者を揶揄するまえに、残業前提で仕事を組み立てない。働く時間に関しては、オトナ世代のパラダイムチェンジも必要なんだと思います。自戒の念も込めて言ってます。

ツナグ働き方研究所 所長 平賀充記

多様な働き方の研究家。人材領域のシンクタンク「ツナグ働き方研究所」を主宰。母体は㈱ツナググループ・ホールディングス(人材総合サービス企業。2018年東証一部上場)。若年キャリア支援/女性活躍/ミドル就職・転職/シニア雇用/外国人採用など、ダイバーシティ雇用に造詣が深い。「東洋経済オンライン」など寄稿多数。近著は「なぜ最近の若者は突然辞めるのか」(アスコム)。

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